R2 高齢者介護施設をエスキスしてみた

一級建築士

初めて設計製図試験を受験される方、エスキスが苦手な方に見てほしいです。

私はエスキスはもちろん、要点記述や作図も苦手だったので、同じ状況で苦労している方の参考になればと思い書きました。

難しいことは何一つやっていない再現性のあるエスキスになっていますので、是非最後まで見ていってください。

周辺環境整理・外構計画

↓まずは周辺環境の整理からやっていきます。

↑課題文と同じようにエスキス用紙に書きます。(書き写すときに間違えないよう注意する。)

道路は幅員はもちろん横断歩道、歩道なども気にするようにしてください。(上の参考画像は歩道までは書いてませんが。。。)

↓次に駐車場含め建物に人がどうやってやって来るかを書き出します。

↑2面道路の課題の場合は北側に利用者用駐車場、西側にサービス用駐車場と計画するところから始めます。(エスキスが進んでいき変更した場合が良い時は、その時に変更する。)

今回駐車スペースには車寄せがあるので、2パターン検討しておきます。

↑どちらを選択してもよいですが、ここではあまり悩まず上の方のヘリアキ9mで進めてみます。

次に地域交流スペースのテラスを検討します。

↑西側にある認定こども園と合同イベントを行うとのことなので、第一候補は西側、第二候補として日当りの良い南側を選定します。

外構計画が見えてきたところで、ヘリアキを検討します。

↑北側は車寄せがあるので9m

西側と南側はテラスを計画する可能性があるので4m

東側は何もないので最小ヘリアキ2m + バルコニー2mの4mで進めます。

(居住部門や居宅サービス部門にバルコニーを計画しそうな雰囲気を察知する。)

面積・高さ検討

次は面積関係をチェックします。

↑建築面積が課題文の条件の範囲内かどうか確認します。

建築面積は余裕があるので、庇、バルコニー等あまり気にしなくても計画できそうなことがわかります。

各階の床面積は条件の範囲内かどうか確認します。

こちらも2400㎡~3000㎡の範囲内なので大丈夫そうです。

次は高さ関係の検討へ進みます。

↑課題文条件の階数、そして今のヘリアキに対して道路斜線の計算式を書いておきます。

続いて階高を設定していきます。

↑室の天井高さの指定や、無柱空間、空調計画などが絡むので確認します。

今回は

  • 天井高さ指定なし
  • 無柱空間指定なし
  • 屋上屋外機指定→空冷ヒートポンプパッケージユニット

なので梁の高さ0.8m、天井ふところ0.4m、天井高さ2.7mで想定し3.9mとなったので階高を4mで設定します。

各階も同様に階高4mで想定し、1FLをGL+0.1m、パラペットを0.6mとします。

↑パラペットの高さ、塔屋を含めた最高の高さの両方の寸法を書いておき、先程計算した道路斜線の高さとの関係性を見ておきます。

今回は西側の道路斜線が厳しいので、こちら側が塔屋となると計画が苦しくなるということを頭に入れておきましょう。それでも管理ゾーンが西側へ来てしまう場合は、2面道路の緩和があるので北西の角に計画であれば斜線をかわせる可能性があるので北側にコアがくるようなイメージをしておきます。

最後に各部門のフロアゾーニングについてまとめます。

今回階指定のあるのは

  • 消火ポンプ室・・・1階に計画
  • エントランスホール・・・風除室を設ける
  • 事務室・・・エントランスホールに面した位置に受付を設ける

上記3室は1階と読み取ることができます。この時点で共用・管理部門は1階でイメージします。

また計画にあたっての留意事項に“各要求室を適切にゾーニングし、明快な動線計画とする”とあることから部門ごとにフロアゾーニングすることを想定します。

特に指定がない場合はセキュリティーの低い方から高い方へ計画します。

  • 1階は共用・管理部門と設備
  • 2階は居宅サービス部門
  • 3階は居住部門

チビコマ・スパン割

チビコマに入る前に今回のスパンの可能性についてピックアップしておきます。

まずX方向は

  • 7m×6スパン、あまり1m
  • 6m×7スパン、あまり1m

続いてY方向は

  • 7m×3スパン、あまり2m

あまりも書いておくと、スパン調整のときに役に立ちます。

次に1マスを1スパンとして6×3と7×3を並べて書きます。

↑チビコマでは室数の多い居住部門が何スパンあれば入るのかを検討します。

  • 1ユニット9室計画
  • 個室1室あたり17㎡以上
  • バルコニーを設ける

以上が課題文条件のため、それを満たすように考えると、条件の良い南側は全て個室にしてみます。室数が不足する分は通路を挟んで東西側へ配置することで1フロアにユニットA、Bが入りそうなことがわかります。この段階では6スパンにするか7スパンにするかどちらでも良さそうです。

ここでどちらのプランも南側バルコニーがはね出しになることが予想されるので採光補正係数が厳しくなる可能性がでてきました。

そこで一度外構計画に戻り、建物を北側へずらせないか再度検討してみることにします。

↑北側の車寄せは奥行がコンパクトな6mのほうに切り替えます。

そうすることで、南側のヘリアキが6mとなり、バルコニーがはね出ししても採光補正係数の心配がなくなりそうです。

建物もY方向が23mから24mになり、8m×3スパン、6m×4スパンが使えるようになり選択肢の幅が広がりました。

↑再度建築面積、各階の床面積を再計算します。

各階の床面積が3000㎡以上でオーバーしていますが、96㎡なので面積調整してこのまま進めます。ただしオーバーしている旨は書き残して忘れないようにしておきましょう。

倍コマ・スパン調整

チビコマではX方向6スパンにするか7スパンにするか決めきれなかったのですが、面積調整と自然採光を確保する観点から、建物中央に光庭を設ける計画とします。

その場合、6スパンよりも7スパンのほうが構造不整合のリスクを回避しやすいので7スパンを採用します。

↓まずはチビコマで決めたように室数を確保していきます。

↑3階の居住部門の9室が2ユニット入りました。

次に1ユニット入りきらなかった居住部門を2階に入れます。

居宅サービス部門と同一階にゾーニングしてよいのか?と思いながらもとりあえず進めてみます。

面積調整と自然採光を取り込むため、建物中央に光庭を計画します。

↓続いて居宅サービス部門の宿泊室5室を南側へ計画します。

↓1階に降り建物中央に風除室、その隣にエレベーターとします。

↑2階、3階も同様に書き、課題文条件で寝台用と人荷用とそれぞれ1台以上あるので注意します。

このあたりで北東の角と北西の角は階段にすればうまくいきそうな雰囲気がしてきます。

↓1階に地域住民が利用する地域交流スペースやテラスを配置します。

↑テラスの第一候補と第二候補に合わせて、両方書いておきます。そうすると1階の西側と南側は利用者ゾーンになりそうなので、東側を管理ゾーンとする計画で検討します。

事務所をエレベーター横に置き、調理室などの管理動線が必要な室を東側へ置いていきます。

2階、3階との縦動線を考えると北東の角が管理階段になり、道路斜線の事を考えると都合が良さそうです。

↓ざっと配置が決まってきたら、1室が17㎡以上確保できるように寸法を決めていきます。

↑課題文を見ていると室内の廊下は有効で1.8m以上とあるので、廊下は芯々3m(2.5mでもよい)

部屋を6m×6mの2分割で考えるとY方向は9mほしい感じです。

Y方向に9mを使う場合はX方向は6mのみで決定します。(柱の負担する面積60㎡以内となる為)

↓通路を書き残りの部屋を配置していきます。

↑中央の光庭に隣接させた場所は共同生活室とデイルームにするとちょうど良さそうです。デイルームが80㎡以上の為、この中央スパンも9mとすれば81㎡確保でき成立します。

風除室の同一位置の2階、3階はスタッフルームを置くと動線的にもセキュリティー的にも良さそうです。

↓最後はコアを重なっている部屋を調整します。

↑地域交流スペースは南側に妥協することで利用者階段を通すことができました。

その代わり西側からも入れるように敷地内を計画します。

クリアできていない床面積が2400㎡~3000㎡の範囲内に入ったのかチェックします。

光庭とバルコニーで面積調整できたので96㎡オーバーは無事調整できました。

1/400エスキス

↓最後エスキスにしてまとめていきます。

↑作図の配置と合わせるように書きましょう。これをミスすると作図時に混乱したり不整合になりやすくなるので注意です。(左上:1階、左下:2階、右上:3階、右下:断面)

1階は敷地範囲を書き、各階柱芯を書いていきます。

↓まずは外構から書いていきます。

↑風除室に合わせるように車寄せの位置を決め、駐車場を配置していきます。駐輪場やサービス駐車場なども下書きします。

↓続いて縦動線を書いていきます。

↑利用者エレベーター、利用者階段、管理エレベーター、管理階段、光庭の下書きをしていきます。ズレると不整合となるので注意です。

↓続いて、倍コマと同じように部屋を下書きします。

↑薄く書いておくと、少し間違えても消さないですむのでおススメです。

↓外構から仕上げていきます。

↑駐車場、駐輪場、車寄せ、風除室、テラスと地域交流スペース、外から決めていきましょう。

↓続いて縦動線を仕上げていきます。

↑利用者エレベーター、利用者階段、管理エレベーター、管理階段、光庭など

↓残りの部屋も仕上げていきます。

↓続いて断面図を書いていきます。

↓最終チェックします。

↑面積、斜線、室の欠落などをチェックしていきます。

チェックして気が付いたこと

  • サービス用駐車場と通用口が離れすぎている
  • アラーム弁室 欠落
  • 空調用PS 未設置
  • 汚物処理室・リネン庫 未設置
  • 浴室が小さいかもしれない

↑サービス駐車場は西側から北東側へ移動させ、通用口に近づけます。

もともとサービス駐車場にしていた部分は設備の搬入や維持更新に配慮してサービスヤードとすることにしました。

アラーム弁室、空調用PS、汚物処理室、リネン室は浴室が移動した部分に押し込んで何とかします。(最悪は小さくてもあればよい。)

居住部門の浴室は中央部の東西面をはね出しバルコニーに変更して6m×9mの部屋を3分割に変更しました。

居宅サービス部門は南東の角の開いているスペースへ引っ越ししてもらいました。

↓採光補正係数に影響が出る為、建物の位置を西へ1mずらし調整します。

↑道路斜線にも影響が出る為、2階、3階の階高を4m→3.5mに調整しました。

バルコニーも2mではなく1.5mにして道路斜線のセットバックに配慮しています。

完成

↓最終的にこうなりました。

100点の解答ではないですが、部屋の大きさを確保しつつ、廊下が通ったプランにまとまりました。

これなら記述も書きやすいはず。。。

  • 個室の住みやすさ・・・自然採光、自然通風
  • 介護のしやすさ・・・車椅子回転スペース、回廊型廊下、各階同一レイアウト
  • 共同住宅・デイルームの自然採光と冷房負荷・・・建物中央の光庭

普段のエスキスから、あまり小さいことにこだわらずに、大枠間違ってなければOKという精神でドンドン進めるのが重要です。

決め打ちせず柔軟に変更を繰替えし、自分で決めたエスキス時間の中でより良いプランに仕上げていけるよう練習しましょう。

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