自分のエスキス方法を確立する

一級建築士

私はエスキスが苦手で何をどうやって進めたら良いのかサッパリわかりませんでした。初年度は資格学校の手順をきっちり覚えましたが、自分のエスキス方法にできるまで消化しきれなかったため、本試験では全く歯が立ちませんでした。。。

そこで2年目は資格学校で覚えた手順をベースに、自分のやり方にセットアップしていきました。具体的には。。。

  • 1/1000が合わなかったので、チビコマと倍コマへ変更
  • 1/400に細かいことをゴチャゴチャ書かない
  • 最大外形、廊下係数の計算が自分には必要ないと感じ省く
  • 斜線制限でヘリアキを決めない

などなど。
エスキスってやろうと思えば何時間でもできちゃうじゃないですか。。。そこを決められた時間内に、そこそこのプランにしなければならないので、そこが難しいんですよ。

だから色々考えながら問題を解いていくと、この検討はここでやったほうがいいなとか、この検討は必要ないなとか、試行錯誤しながら自分のエスキス方法を確立することが合格へつながると思いました。

私も10月入って最後のまとめをしている時に、今のエスキス方法に固まりましたので、自分はエスキス全然ダメなんだって思わなくて大丈夫です。

今から解説するエスキス方法は、あくまでも私がこんな風に解いているという一例なので、エスキスに悩んでいる人の何か気付きになればと思います。

全体の流れ

  1. 周辺環境整理
  2. 外構計画
  3. 面積検討
  4. 階指定、天井高さ指定整理
  5. 階高検討
  6. 斜線検討
  7. スパン割りパターン出し
  8. チビコマ(X方向Y方向スパン数検討)
  9. つながり条件チェック
  10. 倍コマ(スパン調整&室面積調整)
  11. 面積計算再チェック
  12. 1/400エスキス(廊下、設備関係、PS、DS、EPS等詳細)

手順が1~12までスムーズに行くこともあれば、手順8、9、10あたりの計画がうまくいかないと手順1、2、3あたりに戻ることもある。
大事なのはうまくいかなかったときに戻れるようにしておくこと。戻れるところがどこなのか、しっかりパターン出しをしておくこと。
12の1/400エスキスに行くまでに色々検討を繰り返すのが、うまくまとまるコツです。

周辺環境分析

課題文の敷地図で行ってもよいと思います。あえて自分でも書くことで読み落とし思い込みを防ぐためです。
そして書きながらザックリ主要の室をどちら側へ向けると良いのか考えておきましょう。

外構計画

  • 駐車場
  • 駐輪場
  • 屋外施設
  • 設備スペース

建物にどうやって人がやってくるのか意識して書いていきます。
複数選択肢がありそうなときは2パターン出しておきましょう。
プランがうまくいかなかったときに、後から戻ってくることができます。(実際にうまくいかなくて戻ってきました)

面積検討

  • 建築面積計算
  • 各階床面積計算

外構計画ができるとヘリアキが決まります。
ヘリアキが決まると建築面積や各階床面積を算出できるので一旦計算してみましょう。このまま進めるのか、少し削るのかがわかります。

建築面積がオーバーしている場合。。。
X方向を基準としたらY方向が何mになるのか
Y方向を基準としたらX方向が何mになるのか、を算出しておくとよいです。

各階床面積がオーバーしている場合。。。
50㎡以内であれば吹抜けやバルコニーなどで調整できると思うので、次の手順へ進んでOK。
100㎡以上ある場合は、上階で建物形状が小さくなることを想定する。
各階床面積が厳しいと建物形状が予測できてしまうため、近年の傾向は余裕があるパターンが多い。。。

ここでガッチリ決め込んでしまうというよりかは、この後にどのように計画を進めていかなければならないかを判断するための計算とすることがポイントです。

階指定・天井高さ指定整理

  • 階数
  • 要求室の階指定
  • 要求室の天井高さ指定
  • 吹抜け・光庭の階指定
  • 屋外施設の階指定

課題文にある最低限の情報をまとめていきます。私は時短の為、ここで階振りはやりません。(どの要求室が何階にきても総高さは同じと考えているため)無理に階振りをすることが決め打ちにつながってしまわないよう注意です。

階高検討

  • 無柱空間(プレストレストコンクリート梁の梁せい)
  • 空調方式による天井ふところ
  • 指定天井高さ
  • 乾式二重床やOAフロア、段床式の客席など床仕上げ

課題文にある高さに関係する情報を拾い、指定天井高さのある要求室について階高を検討します。

階高が検討できたら建築物の高さを仮設定します。

パラペットまでの高さ塔屋までの高さを2種類出しておくと、各斜線に対して確認しやすくなります

斜線検討

  • 用途地域
  • 斜線勾配
  • 敷地図

上記を課題文から読み取って、道路斜線・隣地斜線・北側斜線の何が該当するかを把握します。
そして東西南北にどんな斜線制限がかかるのか確認しながら、今のヘリアキで検討します。計算式を残しておくと、後で変更になったときにもすぐに対応できます。
ここで斜線に当たるからといって、すぐにヘリアキを変更するのではなく、何mに斜線がくるのかを把握しましょう。建物全体をずらすのか、上階だけセットバックして逃げるのか、平面計画によって決めた方が計画の自由度が上がります。

ここまでの流れで、課題文の条件で建物を計画すると、こんな形になるという全体像をつかんでください。

  • 総3階建ての建物になる
  • 基準階から建物のボリュームが小さくなる
  • 斜線の厳しい方に屋上庭園などを配置する

などなど

スパン割りパターン出し

スパン割りのパターン出しは、この先、チビコマでうまくいかなかったときに戻ってこれるようにしておきます。
X方向であれば7m×6スパンあまり1m、6m×7スパンあまり1m と、参考例には書いてますが、これが結構重要です。
あまり1mは次の倍コマのスパン調整で使えます。(○○㎡以上など面積を少し増やしたいときに使える調整しろとして)

チビコマ(X方向Y方向スパン数検討)

低層ゾーニングパターン
  1. 主出入口
  2. 利用者コア
  3. 管理者コア
  4. エントランスホール(吹抜け)
  5. 利用者要求室 面積or重要度(2層吹抜け)
  6. 利用者要求室 面積or重要度(大)
  7. 屋外庭園など(上階がなくなる要素)
  8. 利用者要求室 面積or重要度(小)
  9. 管理者要求室

1階から検討します。
駐車場などの外構計画でおおよそ主出入口の位置は決まってきますので、そこを基準に配置していきます。
上記順番を参考に1階が終わったら同位置でコアを上階へ上げて同じように各階計画を進めます。

つながり条件や2層吹抜け、屋外施設などがある場合は優先順位が高いので先に検討するのがポイントです。
またチビコマ時は複数候補がある場合はパターンを出しておきましょう

初回にかいたチビコマは消さずに、何案かプランを進めて、一番しっくりくるスパン数を決めてください。

高層基準階パターン
  1. 利用者要求室 面積or重要度(大)
  2. 利用者要求室 面積or重要度(小)
  3. 吹抜けor光庭
  4. 利用者コア
  5. 管理者コア

基準階から検討します。
基準階パターンは要求室が多いので、全部屋配置するためにスパン数は重要になってきます。6スパンor7スパンのように複数パターンがある場合は必ず検討しましょう。
基準階がある程度見えてきたら、コア位置を低層階へおろして各階検討します。低層階の考え方は上記低層ゾーニングパターンと同様です。

エスキス苦手な人のほとんどがスパン数の検討が不十分な人が多いように思います。スパン数が合っていると要求室は効率良くスルスルと入っていきますので、是非検討してみてください。

つながり条件チェック

近年の課題文にはつながり条件が細かく書かれなくなりましたが。。。
チビコマ終わったあたりでチェックできるので、ここで潰しておきましょう。
後戻りすると時間を大幅にロスしてしまいます。。。

倍コマ(スパン調整&室面積調整)

チビコマでつくった案を2倍のサイズで書き写し、ここから要求室の面積を細かく気にしていきます。
要求室の面積が大きいところから要求面積になるよう柱スパンを調整していきます。
面積が大きくなってしまう場合はバルコニーや廊下などで調整していきましょう。
うまくいかない部分は、面積適宜の要求室などで調整していくとまとまりやすいです。

面積計算再チェック

吹抜けや2層分の高さの要求室など、詳細の面積がわかったところで、再度面積計算しておきましょう。
ここで建築面積、各階床面積をしっかりと制限値以内に計画できているか確認します。

1/400エスキス(廊下、設備関係、PS、DS、EPS等詳細)

  1. 敷地図
  2. 柱補助線
  3. 外構
  4. 要求室3平面
  5. 断面図
  6. 斜線・計算式
  7. 床面積・採光補正係数など計算式

コツは1階の外構から書いていくこと。
内部は倍コマまでの検討でつまっているので、外部と内部とのつじつまを合わせていきます。
要求室3平面が完全に固まる前に断面図も書きましょう。
薄めに下書きしていき、徐々に濃く書いていき全体をくっきりさせていくイメージです。(消しゴムをなるべく使わない。)
最終変更内容は消しゴムで直すのではなく、赤ペンで上から書くことによって時間短縮になり、どこを変更したかが残りますので、後で反省、検証するのに使えます。参考にしてみてください。
基本は倍コマで決めた内容を微調整する程度にして、整合性がとれているかのチェックの時間にすることがポイントです。
1/400でプランしてはいけません。。。

1/400エスキスで書くのをやめたこと
  • 延焼ライン
  • 防火設備
  • シャッターライン
  • 要求室面積
  • 歩行距離

ちなみに私はエスキスで防火設備とか書いても、実際の作図で書忘れるという人間だったので、エスキスに何を書いて、何を書かないのか検討しました。

まとめ

  • まずは資格学校で習った手順通りにエスキス方法を覚える
  • 次に時間内にエスキスをまとめるために自分に不要な手順はカット
  • 1/400に何をどれくらい書き込めば作図できるのか理解して余計な書き込みを増やさない
  • 今までのミスを繰り返さない為に、何をどの手順で検討し、どのタイミングで何をチェックするのかをよく確認する。
  • チビコマ、倍コマ、1/400でそれぞれ適切な検討をしているか。

決められた時間内で、完璧なプランを作るのは無理なんです。。。
“一発アウトの無いそれなりの計画をつくる”
くらいの気持ちで肩の力抜いて楽に行きましょう。

ガムシャラにやってもできるようにはなりません。。。
自分のエスキス手順を確立しましょう。

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